ベルギーオールドスクール・エレクトロ？フリースタイル？シンセポップと様々な要素が入り混じる謎のオモロー盤。最高やんけ。（店主）

 ベルギーより来たる、鋼鉄と幻影の舞踏

ベルギーという、あの常に鉛色の雲が垂れ込める北方の湿った土地から、これほどまでに倒錯した、しかし恐るべき生命力を湛えた円盤が飛来しようとは。

これを単なる「オールドスクール・エレクトロ」や「フリースタイル」などという、安直な分類の棚に収めることは、一種の冒涜ですらある。そこにあるのは、ジャンルという名の拘束衣を寸断し、裸形のままで踊り狂う音のキメラだ。

シンセポップの甘美なる虚構と、エレクトロの冷徹なる機械的律動。それらが無秩序に、いや、ある種神懸かり的な作為をもって混淆（こんこう）している。その「謎」めいた様相は、まるで精巧に作られた道化の仮面だ。一見すると滑稽（オモロー）でありながら、その裏側には、現代文明の病理と、それに抗う肉体の躍動が秘められている。

聴く者の鼓膜を震わせる電子音は、あたかも筋肉を鍛え上げる鉄アレイの如く、精神を打擲（ちょうちゃく）する。これこそが「最高」という名の、美的絶頂（エクスタシー）ではないか。

混沌の中にのみ秩序を見出し、不条理の中にのみ真実を見出す。この盤は、まさに現代の焦燥が生み出した、ひとつのグロテスクで美しい「事件」である。（三島由紀夫）